2012年3月3日土曜日

SEEDA - 23edge





















『BREATHE』以降の、DRAKEやUSのエレクトロなトラックを意識した方向性は変わらず。
音は相変わらず良い。音のクオリティに関しては、日本語ラップの中ではずば抜けてますね。
「Burbs」「小金持」「DREAMZ」「Purple Sky」はお気に入り。個人的には受け付けませんが、
バキバキの四分打ちエレクトロの曲もあります。

ラップについては、『SEEDA』での1曲毎にフロウが変わるようなモンスターっぷりとは正反対
の、全体を通してリリックがちゃんと聞こえるようなハキハキとラップするスタイルで統一されて
ます。ファスト・ラップやバイリンガル・ラップは封印。ただこのスタイルも、持ち前の圧倒的な
スキルがあって初めて出来ること。

リリックは詩的で抽象的なもの(「Burbs」)、自分のセンス・スタイル(「SENCE」)、ファンや
周りの人間への感謝(「HOW FAR MY FRIEND」)、隣に住んでる(?)金持ち(「小金持」)、
そしてここへ来てまさかのクサ(「Purple Sky」)等々、社会派一本やりだった頃と比べて幅が
あります。「成功した、もしくは年を重ねたアーティストが何について語るか」という問題は何処
の国のどんなジャンルのアーティストも抱える問題です。SEEDAも『花と雨』以降はその壁に
ぶつかっていた感がありましたが、少しはブレイクスルー出来たかなと思います。『花と雨』の
ようなエンターテイメント性はありませんが、ブログで度々見せているような実直さが出ていて、
とても人間くさい。SEEDAのパーソナリティ含めての評価になってしまいますが、ボクはこの
あまりの真面目さ・正直さに心を揺さぶられました。

「オレはもうストリートにはいない」と宣言してからリスナーの期待とのギャップが広がっていった
のは間違いないですが、今作でSEEDAは自分のやりたい事と期待とのギャップの折り合いを
上手くつけることが出来たように思います。リスナーの側も、SEEDAのスタイルを受け入れる事
がようやく出来るのではないでしょうか(オレは出来たぜ!)。ボクにとってSEEDAは、ラップを
聴き始めるきっかけになったヒーローだからまだ物足りない部分もありますが、このアルバムが
一つの分岐点になる気がします。次の作品では、きっと『花と雨』を超えるような作品を聴かせて
くれるはず。ただ先の事は分からないし、今は素直にヒーローの帰還を祝いたいです。